2011年11月1日火曜日

地理と他教科との融合

今回は

日本地理教育学会例会(10月15日)
早稲田地理教員勉強会(10月28日)

で話題にあがった、地理と他教科との融合・関連についてです。


地理学は「諸科学の素養」「大人の学問(某教授)」などと言われているよう、その内容は広範に及び、裏を返せばその独自性・意義については様々な議論がなされてきました。

地理学は、1960年代の計量革命の頃から「諸科学の例外」との批判から系統地理学へと道を進めることになりました。

その結果、一般的に自然地理学は自然科学、人文地理学は経済学や文化人類学などと関係が強く、地理学は分断された形をとってきました。

しかし、自然と人間の生活とは切り離して考えることができないという現代の風潮から、山本さんが研究なさっているような「人間―環境システム論」が出てくるなど、その在り方は再び問われています。

1/3が理系内容、2/3が文系内容と言われる地理学の独自性は、その双方をつなぐ「架け橋」であると言えます。

学校教育の現場でも、特に教科担当制がとられる中等教育では科目間の連携はほとんど図られず、連携の可能性は学校の実情によって大きく左右されると考えられます。

しかし、「熱意ある教育」をするのであれば、学校カリキュラム(科目間・学年間)を再考することの重要性は論ずるまでもありません。

そして、地理学が広範な学問であるが故に、その独自性と意義・他教科との連携を強く意識しなければ、ますます学校教育での立ち位置がアヤフヤになり、「窓際科目」になりかねないとすら思います。

「他の科目でやるから説明は省きます」「来年やるから」と生徒への発言は、他教科と密接であることを表しているのではなく、地理の独自性を伝えていないだけです。

例えば、「地形」や「気候」の学習で地学や理科と同様の内容を扱うにせよ、空間的配置に目を向けさせる、人間生活との関係性を考えさせる、といった指導は可能なはずです。

ダラダラと書きましたが、①→②→③というステップを踏んだ課題が存在すると考えられます。

①地理学・地理科の独自性と意義を明らかにし、地理の立ち位置を知る
②学校教育において、地理科からはその独自性を活かしてどのようなアプローチが可能なのか考える
③教科間の架け橋として、学校での科目横断的学習方法にどのように寄与できるか提案する


以下、中学校の設置科目を例にして、 連携の具体的な可能性を挙げてみます。


英語…教科書には第三世界を含む多数の地名が登場
数学…読図、作図、時差など、「0(ゼロ)」の故郷インド
国語…作品中に多くの地名が登場
歴史…地理的見方・考え方のひとつ「変化」の視点、防災教育
公民…国際社会(環境問題、紛争など)、身近な地域(高齢化、地域経済など)
理科…自然地理分野
技術…作物の栽培、街の模型作成、
家庭…衣食住から世界地理と関連
音楽…民族音楽、歴史的作品(例:モルダウetc.)
美術…時代状況を反映する美術作品(ゲルニカ、ムンクの叫び)
保健…タウンマップ作成(防災、福祉)
体育…スポーツ大会による地域興し、住民とのかかわり



思いつくままに挙げてみましたが、研究のテーマである「地歴融合」「地理学・地理教育の意義」については、今後も文献にあたっていきたいと思います。

2011年10月27日木曜日

山本隆太の研究室: オフサイドミーティング2

山本隆太の研究室: オフサイドミーティング2: 2回目オフサイドミーティングをしました。 山本が質問に答える形式で進めました。主な話題は、「なぜ自然地理を勉強しようと思ったのか」(=地理の本は読み進めるに当たり、大体、自然→人文という順序が多いから)、「研究滞在や留学の話」(=海外での異文化体験、ベーゼ先生との出会い、教科書...

2011年10月20日木曜日

山本隆太の研究室: 地人相関 石橋

山本隆太の研究室: 地人相関 石橋: 石橋五郎の語る地理学の問題 地理学が地表上における分布事象の客観的描写だけに留まるのであれば、それは学問として成立するかどうかは疑わしい。そこで地理学的事象の因果関係を考察するということであるが、それは古代ギリシアから行われており、フンボルトやリッターによってより法則定立へと...

学習評価から見る地理教育の目標

学校教育における「社会科地理」の学習評価方法と、そこから見えてくる地理教育の目標について述べます。


現在の学習指導要領では、「社会科地理」は

①     「社会的事象への関心・意欲・態度
②     「社会的な思考・判断」
③     「資料活用の技能・ 表現」
④     「社会的事象についての知識・理解」

の4点が学習評価の観点として挙げられています。

1991年改訂学習指導要領で①~③が打ち出され、近年は「生きる」の重視によりさらに重要視されていると言えます。


小学校「社会科地理」では

思考力…学習の問題を見いだして追求・解決する
判断力…地域社会の社会的事象に対して判断する
表現力…地図や統計資料を活用して調べた過程や結果を表現する
関心・意欲・態度…地域・我が国の社会的事象への関心、それを意欲的に調べる
⇒その上で我が国の一員として地域・国土に愛着を持つようになる態度


中学校「社会科地理」では
思考力…「地理的見方・考え方」「地方的特殊性と一般的共通性」の視点を持つ
判断力…多面的・多角的に思考し判断する
表現力…資料を適切に選択し地図化や報告書にまとめ、発表や討論を通して表現する
関心・意欲・態度…社会的事象から地理的事象への関心、意欲的に調べることから追求へ
⇒広い視野で我が国の国土の特色を認識する態度


高校「地理A/地理B」では

①思考力…【地理A】多面的・多角的に思考 【地理B】系統地理・地誌的に思考する
②判断力国際社会の変化をふまえて判断する
表現力…地理的事象を追求した過程や結果を適切に表現する
④関心・意欲・態度…地理的な諸課題に対する関心と課題意識を高め、それを意欲的に追究する
⇒国際社会に主体的に生きる日本国民としての自覚と資質


がそれぞれ観点別評価の内容として挙げられています。

それぞれの評価方法として、
試験(ペーパーテスト)課題(レポート、ポートフォリオ)ノート発表・討論etc.などが挙げられております。

国際教育センターでも「評価規準の作成、評価方法の工夫改善のための参考資料」が作成・公表されていますが具体性に欠けており、特に、「関心・意欲・態度」をいかに絶対評価するかは課題です。

学習活動時の児童生徒の授業態度を評価するのは至難の業であり、ティームティーチングや少人数授業、年間授業シラバスの作成などの試みが求められています。





以上、地理科の学習評価の方法について考えてきましたが、そこから逆算的に「地理教育の目的」について「考えて」みたいと思います。

【最終目標】 公民的資質
マルチスケール・アイデンティティ(関心・意欲・態度)

① 地理的知識
「地球規模で考え、足元から行動する」ために必要なもの(知識・理解)
②     地理的見方・考え方
急速な情報化・国際化の進展により、必要とされる情報量増加
⇒方法知(思考・判断)
③     地理的技能
読図・作図・調査技能・発表技能etc.(技能・表現)



こじつけみたいなカッコになってしまいましたが、最終目標+3本柱が「地理教育の目的」であると考えました。

「地理を教える」でも「地理で教える」でもなく、その両輪で教えることによって、内外(地理学界⇔学校教育・社会)に地理の有用性を訴えかけることができるのではないかと思います。


山本さんの「地理学の源流」については非常に参考になります。直接修論で論じることはなくとも、バックボーンとして、素養として、学びたいと考えております。

ご指摘・ご批判宜しくお願いします!

山本隆太の研究室: オフサイドミーティング1 @ ルノアール早稲田通り店

山本隆太の研究室: オフサイドミーティング1 @ ルノアール早稲田通り店: 昨日、研究発表じゃない形で、研究について話をする会をやりました。 S君のオフサイトミーティングという言葉もありましたが、地理をやる人たちが現場(オンサイト)から離れて会合するのもどうかと思い、オフサイドミーティングと名付けました。いま。 サッカーの試合中、オフサイドとわかっていて...

2011年10月10日月曜日

地理的見方・考え方

テスト投稿として、先生のおっしゃってた地理的見方・考え方の基礎を挙げます。


①多面的に見る(いくつかの側面から見る)
②他の地域と比較してみる
③事象と事象のつながりを見る(例えば、2枚の分布図を重ね合わせる=GISなど、景観写真を用いるなど、大事なのは、生徒にとって見えやすくすること、可視化すること)
④全体像をつかませる

 ⇒①、②は基礎、③、④は発達段階に応じて